農業とは、人類史上最大の生産革命であり、究極の環境破壊でもある

農業において、仮に価値のあるものを生産できても、ビジネスとして採算があうような状況を作るのはきわめて難しい。
私は、植物工場や施設園芸の経営指導や自分でも経営しているので、その大変さを熟知しているプロでもある。

 

農業というのは、世界の食料不足、食料自給という国家保全上の問題、食の安全や美容や健康の確保・・・さまざまなことの基本となるものである。そして、農業には環境上の問題もある。

 

農業=環境保護とかイメージする人も多いかもしれないが、実は、農業こそが人類究極の「環境破壊」だったりもする。

 

産業革命以降に環境破壊が始まったという人も多いが、実は生物の絶滅種の増加は、人類が狩猟採集社会から牧畜農耕社会に移行してから始まっている。

 

狩猟採集社会とは、自然環境の中から人間に必要な食糧を一部おすそ分けしてもらっている生活形態です。それに対し、牧畜農耕社会とは、自然環境を改変して、人間に都合のよい食料を優先的に生産している生活形態となる。
牧畜農耕社会で生産される食料とは、野菜や穀物と呼ばれる植物であり、家畜と呼ばれる動物である。人間専用の食料を優先的に確保できたということで、人類が爆発的に増えていった要因となったといえる。

 

自然農法ビジネスを騙る団体に潜入してみた件

産業革命により、人類の人口が10倍に膨れ上がったのに対し、農耕牧畜の発明は、人類の人口を100倍に膨れ上あげた。
農耕牧畜の発明は、産業革命を上回る人類史上最大の革命…いわゆる「農業革命」であったといえる。

 

しかし、農業革命とは、裏返して言えば、本来、人間以外の生物が享受すべきであった取り分を、人間が奪う仕組みを作り上げたということでもある。取り分を奪われた生物は、死滅していくことになる。生態系は、太陽からの光エネルギーを光合成という形で取り込んで循環している。地球に降り注ぐ太陽エネルギーは有限であり、人間がそれを奪ってしまえば、奪われて生きていくことができない生物が必ず生じる・・・ それが生物の絶滅につながる。

 

農地とは、森を切り開き、本来生息すべきはずであった多種多様な植物を追い出すことであり、森がなくなることで、多種多様の生物の住処と食料を奪うことでもある。

 

 

農業は、人間以外の生物の食料を奪うだけではない。やりすぎた農業は、地域に環境破壊を引き起こし、時として人間そのものにも牙をむく。
人類史上、様々な文明が発祥したのは、その地域に農業が発達し、多くの人が集まるようになったからである。
しかし、同時に、必ず文明が衰退の道をたどるのも、農業のやりすぎで、土地が疲弊し環境が破壊されて生態系が壊されたからでもある。
豊かな穀倉地帯であったはずのメソポタミア文明・エジプト文明の跡地は、農業のやりすぎで、砂漠化してしまっている。

 

農業とは、人類史上最大の生産革命であり、それが、文明社会の基盤ともなった。
しかし、同時に、農業とは、究極の環境破壊であり、ときとして文明を破滅させる原因ともなってきたことも忘れてはいけない。

環境保全と経済性の両立が課題となる自然農法

そこで、環境になるべく負荷をかけない農業を心掛けるべきだという思想が生まれてくる。
肥料を与えず、農薬も使わない。種だけ撒いて、自然のままの状態で育て、収穫する。。。
自然農法と言われるものである。

 

環境への負荷は最小限となるので、自然環境保全にはプラスとなる農法である。しかし、生産量効率は悪くなり、食料生産量は激減してしまう。

 

仮に、地球上のすべての農業を自然農法に替えたとすれば、全人類に必要な食糧を賄えず、食糧危機となる。飢餓状態で、食料をめぐって戦争となり、人類は数を減らし、文明社会は崩壊するだろう。

 

 

つまり、効率性だけを求めた農業は、環境を破壊し、文明を崩壊させるが、かといって効率性を全面放棄した農業であっても、現生人類の食料を賄えず、やはり文明は崩壊してしまう。

 

文明社会を維持しつつ、しかも、環境も保全し、環境と文明を持続可能とする農業・・・
環境が持続可能でありながら、経済性も備えている、そういう相矛盾するものを、農業は求められているのである。

 

もっとも、それを実現するのは、非常に困難であり、悩ましい問題だといえる。

自然農法ビジネスを騙る人たち

自然農法ビジネスを騙る団体に潜入してみた件

そんなこんな考えていたときに、
ある方から「自然農法をお金にするビジネスを展開している人がいる」とお聞きする機会があった。

 

基本、経済的にギリギリで商売にならないのが農業の特徴・・・ なかでも自然農法は効率性を捨ててしまっているので、「お金にするビジネス」を広く展開するなんて、普通なら不可能。眉唾かとも思ったが、まっとうな活動実績のある自然農法団体とのこと。もし、本当に「自然農法をお金にするビジネス」を考え付いたというのであれば、農業と環境保護の矛盾を解決する とてつもなく凄いことだと思い、「いちど会わせてもらえないだろうか?」と人を介して伝えた。

 

すると、「たまたま、責任者が近くにきているので、明日にでも会いたい」との返事が
そんなにスゴイ人が、たまたま出張してきていて、直ぐに会ってもらえるなんて、ラッキーと思い、喜びいさんで会いにいった。

 

アポイント場所は、ある高級ホテルのロビーでとのこと。すこし不便な場所だったので、中心街の違う場所を提案したんだが、どうしても「そこ」でないとダメとの返答。そこで、先方の要望どおり、アポイント場所に向かうことにした。

 

高級ホテルのロビーについたときから、違和感があった。ロビー全体の空気がよどんでいる。
出て来た責任者と称する人と挨拶をするも、「名刺を切らせてしまっていて…」と口頭で名前を告げられただけで名刺交換もしてもらえない。

 

「準備するのでしばらくお待ちください」と告げられたまま、30分ほど放置される。ロビーを見渡すと、あちこちのブースで「商談らしき」ことをしている人たちが何組もいる。どのブースでも、スーツの人物が、主婦や私服で素人っぽい人を、何やら説得しているっぽい。何か違和感がある。
人の動きを観察していると、ホテルロビーの各ブース全体が、自称自然農法団体に占拠されていることに気が付く。

 

これはヤバい団体だと、直観したが・・・
どういうやり口で「自然農法をお金にするビジネス」を騙っているのか興味もあり、最後まで見極めてやろうと、腹をくくることにする。

 

30分ほどたって、「講師」と称するお兄ちゃんが出てくる。
僕は、対等な立場のビジネス商談だということで呼ばれたはずなのに、何故か「指導」と称して一方的に自然農法の「講義」が始まる。しかし、突っ込みどころ満載で、疑問点をいくつか質問をしても全く答えられず、おどおどするばかり。5分ぐらいで退散し、名刺をくれなかった「責任者」にバトンタッチする。

 

しかし、「責任者」の話も、矛盾だらけで、意味不明。

 

 

■責任者:「うちのビジネスモデルは、経産省から『認可』をもらっている特別なものでして…」
■僕:「ん? ビジネスモデルを『認可』するってどういうことなんでしょうか?ビジネスモデル特許でも取得してるということですか?」
■責任者:「いや、経産省から特別に『認可』をもらっている公的なビジネスということです。」
■僕:「『認可』って、法令上定めがある場合にのみ認められる、行政上の特別な行為ですよね。どの法令に基づく『認可』なんでしょうか?」
■責任者:「いや・・・あの・・・ 特別に『認可』をもらうことができたんです。」
■僕:「経産省の認可番号とかありますか?」
■責任者:「・・・・ あの・・・ そこは、あまり重要じゃないんで・・・」
■僕:「はぁ・・・そうなんですか・・・」

 

認可とは、行政庁が同意することで、私人間の法律上の効力を発生させること。認可がないと、法律上の有効とならない。法令に定められている必要がある。
(例)学校法人の設立、公共料金の改定、銀行の合併 など
(注)ビジネスモデルの認可というのは、法令上存在しない。

 

 

 

■責任者:「自然農法は、生産効率が悪いので、生産物に価値が出るのです。」
■僕:(価値があるかは、見方次第だけど、生産効率が悪いのはそのとおりだね)
■責任者:「世界は食糧難で、このままいくと飢餓になります。だから自然農法が重要なんです。」
■僕:「ん? なぜ、生産効率が悪いのに、自然農法にしたら食糧難が解決できるんですか? 逆で、食糧難になるんじゃないんですか?」
■責任者:「・・・・ あの・・・ そこは、あまり重要じゃないんで・・・」
■僕:「はぁ・・・そうなんですか・・・」

 

 

■責任者:「バイオテクノロジーは、今後、500兆円規模の産業に発展します。」
■僕:(500兆かはわからないけど、100兆以上にはなると言われてはいるよね。)
■責任者:「だから、今後、自然農法はお金になるのです。」
■僕:「えっと、よくわからないのですが・・・ 自然農法って、なるべく手を加えない思想の農業ですよね。生物に手を入れまくて改変するバイオテクノロジーとは別方向だと思うのですが・・・ 自然農法とバイオテクノロジーって別物ですよね??」
■責任者:「・・・・ あの・・・ そこは、あまり重要じゃないんで・・・」
■僕:「はぁ・・・そうなんですか・・・」

 

 

■責任者:「バイオ創薬は、今後、数十兆円規模の産業に発展します。タケダなどの大手医薬メーカーもバイオ創薬に参入しています。」
■僕:(これは事実だけど・・・ 自然農法と関係あるのかな?)
■責任者:「だから、自然農法も今後有望なのです」
■僕:「え?? バイオ創薬と自然農法になんのつながりがあるんですか?」
■責任者:「自然農法の土壌は、微生物を活性化するので、そこから創薬の開発が可能なのです。」
■僕:「多種多様な環境が微生物の多様性を生み、創薬の選択肢が増えるというのは理解できます。しかし、それなら多種多様な自然を保全し、微生物の多様性を確保すべきかと思います。自然農法といえども、自然を壊すという意味では、微生物の多様性を壊してますよね。自然農法が、創薬につながる、特別な理由でもあるのでしょうか?」
■責任者:「・・・・ あの・・・ そこは、あまり重要じゃないんで・・・」
■僕:「はぁ・・・そうなんですか・・・」

 

 

許認可もバイオも環境学も農業も医薬も・・・何もわかっていない。というか、興味もないようで・・・
学生さん以下の知識もない人が、「講師」やら「責任者」を自称している。。。

 

 

あまりにも「そこは重要じゃないんで・・・」を連発するので、
「重要なのは、自然農法の実践・経営なんでしょうか?」と質問したら、

 

「いや・・・ 自然農法をされたいのでしたら、してもらってもかまわないのですが・・・ムニャムニャ・・・」と歯切れが悪い返事。
自然農法をしないで、自然農法ビジネスって???
意味不明なので「では、どこが重要なんですか?」と質問したら・・・・

 

責任者:「自然農法 講師になるために、受講料が50万必要なんですが、講師になったら権利が与えられるのです。その権利で、ひとり受講者を連れてくるたびに、半分の25万円がもどってきます」とイキイキと話し始める。

 

はじめに受講料と称する50万円払うと、「自然農法 講師」になれる。「自然農法 講師」になると、受講者を勧誘するたびに、お金がバックされる。沢山勧誘すればするほど、バックされる金額が大きくなる・・・とのこと

 

「この点が、重要なんですか?」とお聞きしたら、
「はい!これが一番重要な点です!!」と意気揚々と返事してくる。

 

自然農法関係ないじゃん・・
無限連鎖こそしてないけど、
ただのマルチ紛い商法じゃん・・・

 

まあ、必ずしもマルチ=違法とは言い切れない グレーゾーンなんで・・・
賛否はあるだろうけど・・・

 

関係のない自然農法とか環境問題を絡めるのは、フェアじゃないよね。。。

 

 

まったく、自然農法がビジネスとして成立していない団体に潜入したお話でした。

 

(文責:山中しんじろう



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